北欧の三つの国のはなし

「北欧」という言葉、日本のお店でよく見かけると思います。雑貨屋さんでも家具屋さんでも、なんとなく「北欧っぽい」という括りで並んでいる。

でも、ひとくちに北欧といっても、フィンランド、スウェーデン、デンマークの三カ国の商品を指していることが多いかもしれません。この三カ国、同じ北欧でもデザインの雰囲気は結構違うんです。

そのちがいを知ってから食器や花瓶を選ぶと、また楽しみ方が変わってくる。どの国のものかわかると、棚に並べたときの景色がすこし変わる気がします。

 


北欧では、物を長く使うことが当たり前の文化として根づいています。食器も家具も、何十年もかけて使い続ける。だから世界中のコレクターから評価されて、現地でも価格が上がり続けています。


日本で「北欧食器」といえば、まず名前が挙がるのがアラビアでしょうか。フィンランドを代表する陶器ブランドで、ヴィンテージも新しいものも、いまだに幅広く出回っています。

フィンランドのデザインの特徴は、色の雰囲気が明るいこと。マリメッコもIKEAも、パッと目に飛び込んでくる鮮やかさがある。家具で言えば、オーク材やビーチ材のような、淡くて光を感じる木の色が多い。

これは、フィンランドの冬と関係があるといわれています。冬の日照時間が極端に短い国なので、暮らしの中に意識的に明るさや色を取り込んできたという話を学生時代に聞いて、なるほどなあ、と思ったのを今でも覚えています。

 

 

お隣のスウェーデンは、フィンランドよりもすこしだけ落ち着いたトーンです。代表的な陶器ブランドはロールストランド。マリアンヌ・ウェストマンがデザインした「モナミ」シリーズは、花柄なのにどこかモダンで、何十年も愛され続けているロングセラーです。

スウェーデンの器を見ていると、色はちゃんと使うけど、色の数を絞っているな、という印象があります。賑やか過ぎず、でも無機質でもない。そのさじ加減が、スウェーデンらしさなのかもしれません。

 

 

三カ国の中でいちばんモダンな印象なのが、デンマーク。食器や花瓶などの陶器は落ち着いていて色も深め。ヨーロッパ版の日本のような雰囲気があって、日本の家具との相性がとてもいい。陶器ブランドのスーホルムやマイケル・アンダーセンは、そのデンマークらしさが色濃く出ていると思います。

 

 

デンマークはハンス・J・ウェグナーをはじめ、家具デザイナーをたくさん生み出した国でもあります。チークやローズウッドといった、深みのある木材の家具が多い国だから、それに合うように落ち着いた陶器が作られてきたのかな、とも思います。部屋を薄暗くしてジャズが聴きたくなるような、そんな落ち着いたトーンのプロダクトが揃っています。

フィンランドの華やかさ、スウェーデンのスタイリッシュさ、デンマークの静けさ。三カ国をこうして並べてみると、それぞれの気候や歴史、職人の感覚が、ちゃんとモノづくりの上に出ているのがわかります。

道具を一つ選ぶとき、そういう背景を知っていると、なんだか遠い場所の暮らしがすこし身近になる気がする。そんな楽しみ方も、ありじゃないかと思っています。

最後に余談ですが、この仕事をしていると、世界中のバイヤーと連絡を取ることがあります。その中でも、北欧の人たちは、どこか日本人と感覚が近いなあと思うことが多いです。静かで、丁寧で、ひと手間を欠かさない。

だから、日本の家に北欧の家具や器を置いたとき、あんなに自然に馴染むのかもしれません。