
ラトビアの首都リガ近郊に、柳のかごづくりを専門とする工房があります。始まりは1985年。創業者のペテリス・テュタンさんが、幼い頃に父から教わったかご編みを家族で楽しんでいたことが、この工房の原点です。
ペテリスさんが最初に編んだのは、針金を使った小さなキーホルダーやミニかごでした。素材は違っても、「形をつくる楽しさ」に夢中になり、やがて柳を使った本格的なかご編みへと取り組むようになります。父から技術を学び、母は柳の枝を集め、従兄弟や地元の職人たちからも知恵を借りながら、少しずつ技を磨いていきました。

この工房の特徴は、柳の栽培から編み上げまでを一貫して取り組んで行っていること。 かごに使えるのはしなやかで若い枝だけで、創業当初は道路脇の溝や野原を巡って適した柳を探していたといいます。
「枝を曲げてみて、折れてしまうものは使えない。しなやかに曲がるものだけが良い柳。」そんな基準で一本一本を見極め、素材を選んでいました。現在では自家栽培に加え、契約農家からも柳を仕入れ、年間100万本以上の柳を使用するまでに成長しています。
こうして生まれるかごは、繊細な編み目でありながら丈夫なつくり。手仕事ならではの温もりと、日々の暮らしで気兼ねなく使える実用性を兼ね備えています。
今ではラトビアを代表する工房の一つですが、その根底にあるのは、家族で一緒に編んだ最初のじゃがいも籠の記憶。一本の柳が人の手によって編み込まれ、日々を支える道具に変わっていきます。
そこには自然と人、そして家族の物語が静かに息づいているのです。

