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アメリカの家具史の中で、特別な存在として語られるのがShakers(シェーカー教徒)の人々が作った家具だ。

シェーカー教徒は、キリスト教を基盤とした宗教共同体。 正式には、Shakers(キリスト再臨を信じる信徒の共同体)と呼ばれている。18世紀のイギリスで生まれ、のちにアメリカへ渡り、各地に共同体を作って暮らしていた。

彼らの信仰にはいくつか特徴的な考え方がある。
その一つが共同生活。
財産は個人で持たず、すべてを共同体で分かち合いながら暮らしていた。また、当時としては珍しく、男女が平等であることも大切にされていた。仕事や役割も男女で分かれながら、互いに対等な存在として生活していたと言われている。
そしてもう一つの特徴が、独身主義。
結婚をせず、信仰と共同体の生活に身を捧げるという考え方だった。
そんな暮らしの中で大切にされていたのが、日々の労働。
シェーカー教徒にとって働くことは、ただの作業ではなく、神への祈りのようなものだったと言われている。農業や木工、手工芸などさまざまな仕事を行い、暮らしに必要なものの多くを自分たちの手で作っていた。

彼らの生活の中心にあったのは、「質素で誠実な暮らし」という考え方。
華美な装飾や贅沢を好まず、日々の労働を大切にする。そうした暮らしの中で生まれた道具には、いくつか共通した特徴がある。装飾はほとんどなく、形はとてもシンプル。使いやすく、丈夫で、長く使えるよう丁寧に作られている。
こうして生まれた家具は、後に「シェーカー家具」と呼ばれ、現代のミニマルデザインにも通じる美しさを持つものとして高く評価されている。その代表的な道具の一つが、シェーカーボックス。
裁縫道具や小物、乾物などを入れておくための実用的な道具だった。シンプルで軽く、丈夫。そして、きれいに重ねて収納できる形。一見するととても素朴だけれど、その形や構造には長い年月の知恵が詰まっている。

シェーカーボックスには、特徴的な形がある。それは、楕円形であること。四角い箱の方が作るのは簡単だが、シェーカー教徒はあえてこの形を選んだ。 理由のひとつは、木の強さを活かすため。薄く削った木を蒸して柔らかくし、ゆっくり曲げて楕円形にしていく。この方法は木目を断ち切らないため、とても丈夫な箱になる。さらに角がないことで衝撃にも強く、日常の道具として長く使うことができる。つまり、この形は装飾ではなく機能から生まれたデザインなのだ。

シェーカーボックスのもうひとつの特徴が、側面に並ぶ小さな銅のリベット。
これは木を固定するための釘で、錆びにくく長く使えるという実用的な理由から使われている。この「スワロウテイル」と呼ばれるツバメの尾のような継ぎ目は、今ではシェーカーボックスを象徴するデザインにもなっている。

シェーカーボックスはサイズごとに重ねて収納できるようにも作られている。
収納スペースを無駄にしないための工夫であり、共同生活をしていたシェーカーの人々にとって、道具がきちんと整理されていることはとても大切なことだった。
道具を通して、遠い時代の暮らしや考え方に触れる。
良い道具であるからこそ、その製法は今も昔とほとんど変わらないまま受け継がれている。時代が変わっても残り続ける道具には、やはり理由があるのだと思う。
