柳の枝から生まれる、暮らしのかご

ラトビアの首都リガの近郊に、柳のかごを専門に作る工房があります。始まりは1985年。創業者であるペテリス・テュタンさんが、幼い頃に父から教わったかご編みを家族で楽しんでいたことがきっかけでした。その小さな趣味はやがて評判を呼び、1999年には本格的な仕事へと形を変えていきます。
ペテリスさんが最初に編んだのは、針金を使った小さなキーホルダーやミニかごだったそうです。素材は不格好でも「形を作る喜び」に夢中になり、次第に柳を材料とした本格的なかご編みへ。父が技を教え、母は柳の枝を集め、従兄弟や地元の名匠から知恵を授かりながら、少しずつ腕を磨いていきました。家族の支えと積み重ねた経験が、今の工房の礎になっています。
この工房の特徴は、柳の栽培から編み上げまでを一貫して手作業で行っていること。かごに使えるのはしなやかで若い枝だけで、創業当初は道路脇の溝や野原を巡って適した柳を探していたといいます。
「枝を折ってみて、ポキっと折れるなら不適格。しなやかに曲がれば一級品」。そんな目利きの作業を経て、ようやく素材がかごに生まれ変わるのです。現在では自家栽培や契約農家からも仕入れ、年間100万本以上の柳を使うほどに成長しました。
工房で生まれるかごは、繊細でありながら堅牢さを兼ね備えています。細やかな編み目は手仕事ならではの温かみを宿し、暮らしにすっと馴染む存在感を放ちます。小さなトレイから大ぶりのバスケットまで幅広く、オーダーメイドや修理にも対応しながら、暮らしに寄り添う道具を生み出し続けています。
今ではラトビアを代表する工房の一つですが、その根底にあるのは、家族で一緒に編んだ最初のじゃがいも籠の記憶。一本の柳が人の手によって編み込まれ、やがて日々を支える道具に変わっていく。
そこには自然と人、そして家族の物語が静かに息づいているのです。
