フィンランド西部、オストロボスニア地方のマラックスを拠点に活動する木工職人、ボー・オーケ・リュンガルス(Bo-Åke Ljungars)。
彼が長年つくり続けているのが、フィンランドに古くから伝わる曲げ木の箱「Vakka(ヴァッカ)」です。ヴァッカは、薄い木の板を曲げてつくられる、フィンランドの伝統的な木箱。古くから食べ物や身の回りのものを入れる、暮らしの道具として使われてきました。

小さなものにはアクセサリーや文房具、裁縫道具などを。大きなものなら、パンや果物を入れたり、日用品をまとめておく収納にも使えます。
何を入れるかを決めすぎず、そのときどきで自由に使える。昔から使われてきた道具ですが、今の暮らしにもすんなり馴染む木箱です。

リュンガルスがヴァッカをつくり始めたのは1990年代のこと。
父親が曲げ木細工の講習を受けたことをきっかけに、自身もつくり始めました。専門的な木工教育を受けたわけではなく、身近に残っていた曲げ木の技術に触れながら、独学で身につけていったそうです。
はじめは友人や知人のためにつくっていたものが、やがて地元企業から贈答用として注文を受けるように。そこから仕事として、本格的にヴァッカづくりを続けるようになりました。

ヴァッカは、木の塊を削り出すのではなく、一枚の薄い板を曲げて形をつくります。木を煮て柔らかくし、型に沿わせてぐるりと曲げる。工房では、いくつものクランプで固定しながら、ひとつずつ形を整えていきます。
リュンガルスが参考にしているのは、昔ながらのフィンランドのヴァッカだけではありません。スウェーデンやノルウェーにも残る曲げ木細工を調べ、それぞれの形や技術を取り入れながら制作しています。
昔のものをそのまま再現するのではなく、受け継がれてきた技術をもとに、自分のヴァッカをつくる。そんな仕事を30年以上続けています。
ヴァッカに使われるのは、ハンノキやヤナギ、カーリーバーチなど、フィンランドで育った木々。なかでもカーリーバーチは、波打つような木目が特徴です。同じ模様はひとつとしてなく、木によって表情も少しずつ異なります。


リュンガルスは、地元の製材所から制作に向いた木材を譲り受けることもあるそうです。カーリーバーチはフィンランド東部から仕入れ、木と木を綴じるための白樺の根は、自ら湿地へ出向いて採取することもあります。

細く長い根は、曲げた木を綴じ合わせるために使われます。ヴァッカの側面に残る、小さな縫い目のような部分。木と根という身近な素材から、ひとつの箱がつくられています。
こうしたリュンガルスの仕事は、フィンランドでも評価されてきました。2014年には、フィンランドの工芸賞「Taito Prize」の候補に選出。2020年には、ヘルシンキのギャラリーLokalによる「Recognition Gift」でHonourable Mentionを受賞しています。
薄い木を曲げ、根で綴じる。昔から続くつくり方で、今もひとつずつつくられているヴァッカ。使い続けるうちに色艶が増し、少しずつその家の道具になっていきます。
※天然の木を使い、一点ずつ手仕事でつくられているため、木目や色合い、表情にはそれぞれ違いが見られます。お届けする個体はお選びいただけませんが、木ならではの個性としてお楽しみいただけましたら幸いです。
また、表面にはオイル仕上げが施されています。使い始めは、紙や布などにオイルが移ることがありますので、しばらくの間は触れるものにご注意ください。
カーリーバーチ(蓋)
奥行:約9.5cm
高さ:6cm
※多少の誤差はご容赦ください
